Q&A - 後期進学関係

Q1. 文化人類学コースに進学したい場合、進学選択はどのようになるのでしょうか?

    文化人類学コースへは、教養学部後期課程の教養学科超域文化科学分科の一コースとして、教養学部前期課程の全科類から進学することが可能です。教養学科超域文化科学分科には、文化人類学コースのほか、表象文化論、比較文学比較芸術、現代思想、学際日本文化論、学際言語科学、言語態・テクスト文化論があり、全部で7コースです。

   進学選択では、超域文化科学分科(7コース全体)の枠内で進学内定を得ることが必要です。そのあと、2年次のAセメスター中に、7コースの一つとして文化人類学コースを選択することができます。この選択に関しては人数制限は特にありませんので、自由意志で決めることができます。

   なお、文化人類学コースに進学する場合は、2年次のAセメスターで必修科目の「文化人類学基礎論」を必ず履修してください。

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Q2. 前期課程で文化人類学関係の授業を履修していないのですが、進学した場合に困ることはありますか?

 文化人類学は非常に知名度の高い学問とは言えないので、前期科目を履修する機会がなく、あとになって文化人類学に関心を持ち、進学先として選んだ人はたくさんいます。前期課程の文化人類学関係の科目を受講することは望ましいですが、やはり学習が大きく深まっていくのは、後期課程に進学して様々な授業に参加する中でのことですので、心配は無用です。

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Q3. 理系から進学して困ることはありますか?

   これまでも理系から進学してきた学生は多くいますし、大学院に進んで研究者になった人も少なくありません。文化人類学はもともとは文理融合的な学問でもありますし、スタッフの中には(理系の教育を受けた)科学技術人類学の先生もおられます。進学後にしっかり勉強してもらえば大丈夫です。

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Q4. 文化人類学コースの履修モデルはどのようになっていますか?

    文化人類学という学問は様々な入口から入ることができ、そこから関心を広げつつ多様な学びとして積み重ねていく学問です。このため科目履修は自由度が高く、必修科目は、文化人類学基礎論(2年Aセメ)、文化人類学基礎演習(3年Aセメ)、フィールド演習(3年Sセメ・Aセメ)、卒論ゼミ(4年Sセメ・Aセメ)だけです。これらの科目を中軸に、自らの関心とペースに従って、文化人類学の様々な分野・トピックに関して開講される入門ゼミ、特定の内容に関する講読ゼミ・研究ゼミ、また教養学科の諸科目を選んで履修していきます。この意味で、必修科目を除けば履修モデルのようなものはありません。

   もちろん、このように各自の自由に任されているということは、同時に、各自が主体性を持って学んでいく必要があることを意味します。必修科目は毎学期あるので、そこでの担当教員や他の教員、またコースの仲間と話し合いつつ自らの関心を育て、充実した学びを実現してほしいと考えています。

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Q5. フィールド演習ではどんなことをするのでしょうか?

 フィールド演習の授業担当教員と相談しながら、各自が、試行錯誤しながら主体的に研究対象(通常は東京圏内)を選び、フィールドワークの作業を重ねていきます。そしてAセメスターでは調査に基づいて各自が論文を執筆します。

 文化人類学のフィールドワークの作業は非常に時間のかかる作業で、後期課程の枠内でそれを本格的な形で行うことはできません。その意味で、フィールド演習で行うのはそのための入門的な作業です。しかし、自分自身で調査を行いながら、豊富な調査経験を持つ教員や補助スタッフ(RA、TFなど)からフィードバックをもらうことで、文化人類学的なフィールドワークの奥深さや重要な意義を体感することができます。またAセメスターでそれに基づいて論文を書くことで、さらに深い理解を得ることができます。

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Q6. 卒業論文のテーマは自由に選べますか? 卒業論文は必ずフィールドワークに基づいて書くのでしょうか?

 テーマの選択はまったく自由で、自分で思いついたテーマを出発点に、4年次の卒論ゼミを中心に、コース内の先生と相談しながら、テーマを定めて研究を深めていきます。フィールドワークに基づいて書くことは必須ではありません。

 フィールド演習についての質問に対する答えで述べたように、後期課程の枠内で厳密な意味でのフィールドワークを行うことは困難で、(フィールド演習の経験も含めて)自らの経験も活かしながら、文献(特に民族誌と呼ばれる文献など)を読み込んでいく作業も非常に重要です。最終的に、文化人類学的な「物事の見方」を学んでもらうことが私たちの教育の目的です。

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Q7. 文化人類学コースはどのような雰囲気のところでしょうか?

 文化人類学コースには、例年5〜10人前後の学生が進学してきます。文化人類学コースの中心は駒場キャンパス14号館4階で、ここでゼミ授業の多くが行われます。同じ階の機器室の半分くらいが学部生の居場所になっており、お弁当を食べたり、各自が勉強したり、また学生同士で歓談したりしています。文化人類学コースのもう一つの特徴は大学院生との距離がとても近いことで、ゼミ授業でも一緒になることが多いため、分け隔てなく交流しています。基本的には、明るくて、雰囲気の良いコースだと思われます。

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Q8. 文化人類学と社会学のどちらを選ぶべきか迷っています。この二つはどこが違うのでしょうか? 

    人間社会を研究対象とし、調査という行為に基づいて考察する、という点で、社会学文化人類学は確かに共通しています。 また社会学はかなり多様性る学問なので、社会学者の中には文化人類学者に近い考え方をする研究者もいます。

 とはいえ、全体として見ると、社会学と文化人類学は学問の方向性において異なっています。社会学の焦点は文字通り「社会」にあり、とりわけ自らの社会(現代社会)を把握してそこに介入することが比較的強く意識されます。これに対して文化人類学は、「人類」というものの多様な姿を現場に即して徹底的に深く理解しようとします。

 近年では文化人類学者も現代社会の研究を多く行っていますが、そこでも、過去の文化人類学の蓄積を活かしながら、そして人間の生(現代社会における生に限定されない)がいかに多様でありうるかを常に考えつつ、現実を新しい目で見直すことが重要になります。

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Q9. 地域研究との間で迷っていますが、どう考えたら良いのでしょうか?

    地域研究は様々な学問分野から研究対象の地域を理解しようとする営みで、文化人類学はその学問分野の一つです。また文化人類学者は研究対象の現実を全体として理解しようとするので、研究地域を共にする他分野の研究者から学ぶことは多くあります。一言でいえば、地域研究と文化人類学は両立するものです。

 ただし、後期課程で文化人類学と地域研究のどちらを専攻にするかというと、そこでは明確な違いが出てきます。地域研究の焦点は「地域」ですので、後期課程の教育(地域文化研究分科)においても、研究地域において支配的な「言語」を深く学ぶことが前面に出てきます。これに対して文化人類学コースでは、「人類」というものの多様な姿にアプローチする学問的方法を学ぶことが前面に出てきます。研究者となる場合は、どちらを先にやるかという問題になる部分もありますが、後期課程で学ぶ時間は限られているので、より強く興味を持つ方を選ぶことになると思われます。

 なお、教養学科には副専攻(サブメジャー・プログラム)の制度がありますので、文化人類学コースでフィールド演習(文化人類学コースの学生のみが対象)なども含めて学びつつ、興味のある地域を副専攻とすることは可能です(もちろん主専攻の場合とは重みが異なってしまいますが)。

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Q10. 表象文化論コースとは「文化」の捉え方が違うのでしょうか?

 表象文化論コースにおける「文化」は、文学・芸術・哲学・思想など、(映画やポップカルチャーも含め)作者が書物や作品の形で表現したものの研究が中心となるため、アプローチとしては書物や作品を広義でのテクストとして研究していく、人文学的アプローチのトレーニングが行われます。これに対して文化人類学という学問では、基本的には、特定の制作者というよりも人々一般の営みの中における「文化」的なものを、フィールドワークによって把握していく作業が中心になります。

 ただし、表象文化論コースは、書物や作品を単に研究対象として捉えるのみならず、制作の実践に向かって踏み出していく方向性も持っているので、そこでの作品の受容者との関係も含め、文化人類学コースの意味での「文化」に接続していく面もあると考えられます。また文化人類学の方でも、芸術研究は中心ではないものの、現代社会の研究を行う中で「制作者」的な位置にある人々の営為を内側から捉える必要は高まっていて、卒業論文から博士論文まで、文化人類学コースの研究で芸術に関わるテーマが選ばれることはしばしばあります。

 以上を前提としたうえで、自分の関心によりマッチしたカリキュラムを提供している方を選ぶのが良いと考えられます。

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Q11. 言語に関心があるのですが、学際言語科学との違いは?

    文化人類学において言語は確かに重要な位置を占めています。過去においても、特に少数民族の調査をする場合など、文化人類学者は言語学者と似たような姿勢でその言語について深く学び、場合によっては、その言語に関する語学書を書いたりもしてきました。また、文化人類学の中には言語人類学という分野があり、文化人類学コースには言語人類学を専門とする教員がいますので、ほぼ毎年授業が開講されています。

 とはいえ、文化人類学コースは言語学を中軸に据えているわけではなく、学際言語科学コースのように専門化した学問としての言語研究に進んでいくわけではありません。文化人類学にとって大事な問いは、「言語とは何か」、「言語はどのように機能するか」等ではなく、「人々の現場の営みにおいて言語がどのように使われているか」です。

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Q12. 後期課程在学中に留学することはできますか?

 在学中の留学を妨げる大きな要因は特にありません。留学の期間や卒業を希望する年度などを踏まえ、教員に相談した上で、各学期に取るべき必修科目を決めて、留学することになります。特に各自の3年生の秋から留学する場合、フィールド演習の後半をそのままAセメスターで行うことができなくなりますが、過去にもそうしたケースは何度もあり、ケースバイケースで対応しています。駒場は独自の留学プログラムもあり、様々な形の留学が可能ですので、関心があれば「グローバル駒場」https://www.globalkomaba.c.u-tokyo.ac.jp/)を確認してみてください。

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Q13. 卒業生の進路はどうなっていますか?

 大学院進学のほか、就職については、一般に教養学科の他のコースと大きな違いはありません。文化人類学コースの卒業生は後期課程で学んだ経験を生かして様々な職場で活躍しています。

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