浜田 明範

浜田 明範 HAMADA, Akinori  [准教授]   

総合文化研究科・教養学部スタッフ】

医療人類学、経済人類学、感染症、薬剤、健康保険、再分配、冠婚葬、集金、人類学理論、ガーナ、日本

Email:  

hamada@anthro.c.u-tokyo.ac.jp

最近の研究関心

理論的には、ポリティカルエコノミー、グローバル化、科学技術の進展と普及、気候変動といった大きな流れを、身体的な活動や周囲の事物の配置と関連づけながら理解する方法を探究しています。

感染症に注目しながら人類社会と地球環境を展望し直すために、人類学者と歴史学者を中心に研究チームを立ち上げ、「感染症の人間学」という新しい分野を構想しています。

公共人類学的な関心から日本における新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応についても発信・検討してきました。

英語圏の人類学理論の展開を把握するために、いくつかの本を共訳してきました。今後も、何冊かの翻訳に携わる予定でいます。トレンドの移り変わりが早く、細分化がとまらない人類学の幹に当たる部分を自分の納得できる形で把握しようとしています。

西アフリカのガーナ共和国南部のカカオ農村地帯で総計3年強にわたってフィールドワークをしてきました。そこでの経験を基盤としながら、医療人類学(とくに感染症の人類学)と経済人類学(とくに再分配の人類学)を中心に論文を書いています。次に長期で調査にいけることがあったら、都市部に手を広げたいと考えています。


大学院への進学を考えている方へ

世界がどのように成り立っており、何になろうとしているのか。医療・環境・身体に注目しながら、この世界の生成を化学物質のレベルに焦点を当てて考えています。最近は、認識の化学化/脱化学化という発想(例えば「炭水化物」と「うどん」のいずれに照準を絞っているか)の洗練を目指しています。皆さんとともにこれからの人類学の可能性を探っていきたいと思っています。

人類学は可能性に満ちた分野です。皆さんとともにこれからの人類学の可能性を探っていきたいと思っています。身の回りの事からヒントを得て、どんなことでも深く、広く検討していけるのが人類学のいいところです。好奇心と柔軟性を大事にしながら、研究を楽しんでいきましょう。

学生の皆さんが自分の関心を深めていける環境を整えることを意識しています。授業では、英語の民族誌を精読していくスタイルを取ることが多いです。


研究プロジェクト

【現在進行中のプロジェクト】

【いま関わっているプロジェクト】


代表的な出版物

単著

2015年に出版された前著から10年のあいだに紡いできた医療人類学に関する思考をまとめたことができました。医療人類学理論のアップデートを図る第1部と新型コロナウイルス感染症のパンデミックの経験についてまとめた第2部の2部だてになっています。僕の人類学について知りたい人にまずは読んでもらいたい本です。以下に挙げているいくつかの文章を推敲した決定版も含まれています。


博士論文をアップデートして出版したものです。私の研究の出発点ですが、今となってはやや恥ずかしい部分もあります。僕の思考の変遷を知りたいという奇特な人には必読だと思います。2000年代初頭には人類学ではかなりマイナーなテーマであった薬剤と健康保険ですが、フィールドで出会った現実からするとその重要性は明らかでした。今から見ると、世界各地で同じような関心で研究を始めていた人がそれなりにいて、その人たちは医療人類学という学問分野における重要な柱を担っています。そういう意味では、目の付け所は良かったと思います。話をする機会があれば、いろいろとアップデートすべき場所について説明できると思います。


【論文・ブックチャプター】

公衆衛生において守るべきとされる社会や集団とはどのようなものであり、どのような動きのなかで作られているのでしょうか。日本における新型コロナウイルス感染症のパンデミックの経験と「集団化」という発想を軸に、生物学的な特徴と社会的な特徴がどのように絡み合っているのか、そして、集団を構成するとされている人間自体がどのような集団化の結果として現れているのかについて書いています。最後の方では、そうして立ち現れる人間観を人間だけでなく、ウイルスにも適用したときにどのような思考が拓かれるのかについて検討しました。


ブリュノ・ラトゥールのAfter lockdownの紹介をしながら、パンデミックと気候変動の類否的な関係について議論しました。ラトゥールが言うように、パンデミックが気候変動に対応するためのレッスンだとするならば、それはどのような意味においてなのでしょうか。あるいは、ANTを基点に置いた政治というものがあるのだとしたら、それはどのようなものなのでしょうか。そして、私たちが、他の人間や生物や無生物とつねに重なり合っているというのは、どういう状態なのでしょうか。


ガーナ南部の仕立屋が一人前と認められたときに行われる集金パーティーを事例に、そこで仕立屋の能力がどのような形で人々に提示されているのかを分析しています。仕立屋は、花嫁のようでもあり、監督のようでもあるものとして、自己を提示するのですが、その影響力は決して些末とは言えないものなのです。


人類学やその周辺で議論される「ポスト多元」という概念の特異性を検討するために、人類学における「多元」概念の歴史を概観しました。まだまだ不十分ですが、この論考の執筆を契機として、人類学史への関心が高まっています。掲載先の設定でリンクできませんが、検索すれば読めます。


日本における新型コロナウイルス感染症への対応について多角的に論じています。私たちがいかに集団化され、統治されていたとしても、身体の被傷性を忘れてはいけないこと。感染症対策と経済や自由のいずれを選択すればいいのかという問いは、擬似問題に過ぎないこと。パンデミックが、密度だけでなく速度とも密接に関係していること。


感染症の人類学の動向について、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを念頭に置きながら解説しています。特に、量的なものと質的なものは対立的しているわけではないということと、バイオソーシャルという発想の重要性に焦点を当てています。とりわけ後者は、僕のパンデミック論の重要な柱になっています。こちらのページの「立ち読み」から読めます。


新型コロナウイルス感染症のパンデミック下の経験について、とくに感染者数というものがどのように作られ、どのように経験されているのかについて、最初期に考えたことをまとめたものです。僕の書いたものにしては珍しく、多方面から反応があった思い出深い論稿でもあります。


ガーナの社会福祉の状況について、健康保険や感染症対策、自生的な福祉と言えるようなものに焦点を当ててながら解説しています。ガーナについての地域研究的な関心は、僕にとっては依然として重要なものであり続けています。図書館で探してみてください。


2010年代以降の人類学において注目を集めた「存在論的転回」という流れについて、解説したものです。今から見ると、不十分な点もありますが、当時としては、可能な限り分かりやすい解説になっていると思います。


大村智のノーベル賞の受賞にもつながったイベルメクチンが、ガーナ南部でどのように配布されているのかについて検討し、化学的環境という概念を打ち出しています。この概念についてはその後、うまく展開できていませんが、その重要性はいささかも減じておらず、むしろ高まってきていると考えています。


自分の人類学の理論的基盤について、博士論文を書いた後に改めて整理したものです。僕の研究の理論的基盤に関心のある人は、まずはこれを読んでいただくのがいいかなと思います。


【がんばって作った本】

パンデミックの発生から半年のあいだに起きたことについて、人類学者を中心に即応的にまとめた論文集です。重要な論点は、少なくとも萌芽的には、ここですでに網羅されていると思います。詳細は、Biblio Plazaへ。


経済人類学の忘れられたテーマとしての再分配を、検討すべき主題として再生することを企図して作った論集です。執筆陣がとても豪華です。僕自身の書いた章は、レビューも事例の記述も良質なものになっていると思います。特に後者はフィールドワークの経験をこれでもかと盛り込んであります。ぜひとも図書館で探してみてくだい。詳細は、Biblio  Plazaへ。


2015年に国立民族学博物館で実施した国際シンポの成果をまとめたものです。その後の国際的な研究交流の基盤になっているものでもあります。僕の書いたものについては、ほぼ日本語で書いた他の論考でカバーできると思います。


【翻訳】

人間をまずもって話したり考えたりするのではなく、食べるものだと考えると何がどう変わるだろうか。ここから探究を始めるモルの思考の小道をたどる本書は、人間と世界についての理解を更新する壮大な旅へと続いていきます。


大御所の人類学者のタウシグが、コロンビアの暴力と美容整形について論じた本です。暴力がテーマなので、暴力的な描写も多いですが、全体としての読後感は他では味わえない良さがあると思います。作業を進める中で、タウシグが美文の使い手だと言われる理由も納得できるようになりました。


人類学におけるケア論で避けては通れないのがこの本です。人類学の外側でもよく参照されていると思います。ケアのロジックを選択のロジックとの対比において論じているのですが、細かい部分でも勉強になることがいろいろ発見できると思います。


2023年の現在から見ても、この本は、その後のANTの展開を予告しているような部分があるのですが、そうなった理由としては、モルさんがフェミニストの素養があったことと医療現場に注目したことが重要であるように思います。この本については、ばっちり解説できると思います。


言わずとしれた、現代人類学の必読文献のひとつ。初めての翻訳作業で大変つらい思いをしました。日本語だけでよく分からない場合には、原点を横において読めば、その難解の英文を、どういうふうに解釈したのかは分かるはずです。内容について聞かれてもその場ですぐに答えられないかもしれませんが、頭を突き合わせて一緒に原点を参照する機会をもてれば、自分の解釈を率直に提示できます。

   ↑Top 

【文化人類学研究室・教員関係ページ】  

教員紹介(全体)・・・コース教員一覧(各教員の研究内容概要、個別ページへのリンクを含む)

教員による著書・・・スタッフの著作の表紙画像(内容紹介ページへのリンク付き)

進学を考えている人へ(全体)・・・教員スタッフからのメッセージ(「進学情報」セクション内)

   ***

オオツキ グラント ジュン OTSUKI, Grant Jun  [准教授] 

藏本 龍介 KURAMOTO, Ryosuke [准教授]  (東洋文化研究所)

後藤 はる美 GOTO, Harumi [准教授]

関谷 雄一 SEKIYA, Yuichi [教授] 

塚原 伸治 TSUKAHARA, Shinji [准教授]

津田 浩司 TSUDA, Koji [教授]

中村 沙絵 NAKAMURA, Sae [准教授]

名和 克郎 NAWA, Katsuo [教授] (東洋文化研究所)

浜田 明範 HAMADA, Akinori [准教授]・・・本ページ

宮地 隆廣 MIYACHI, Takahiro [教授]

箭内 匡 YANAI, Tadashi [教授]

渡邉 日日 WATANABE, Hibi [教授]

森山 工 MORIYAMA, Takumi [教授]  ※兼任教員、総合文化研究科地域文化研究専攻

   ↑Top