本研究室における大学院教育

本研究室の教育体制

 スタッフ全員の協力のもとでの研究指導

   東京大学文化人類学研究室における大学院教育は長年、個人指導を軸としたものでしたが、2022年4月より、全体ゼミと集団指導を軸とする方向に舵を切り、以来この新たな理念のもとで教育体制の整えてきています。

   文化人類学コースには10名を超える様々な専門分野(文化人類学の諸分野のほか民俗学、歴史学、政治学、科学技術社会論など)のコース教員がいますが、新教育体制はこの恵まれた教育・研究環境の潜在力を十全に生かし、全員の橋梁のもとで質の高い大学院教育を行おうとするものです。スタッフは相互に連携しつつ、大学院生の一人一人が多様な知見に触れつつ自らの能力を伸ばし、研究を発展させられるようにと日頃の授業や研究指導を行っています。

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全体ゼミ、通称「水曜ゼミ」

   教育体制の中核にあるのは、教員・学生全員の参加のもとで(修士と博士は別)、各学生が自らの研究について発表する全体ゼミ(通称「水曜ゼミ」)です。水曜ゼミは授業期間中の水曜午後に開講されます。各学生は、水曜ゼミでの発表に向けて、指導教員等と相談しながら、自らの研究素材を中心に準備を進めます。当日は、発表内容について皆で議論し、発表後は、そこで受けた様々な刺激をもとに、指導教員等のサポートも受けながら、自らの研究をさらに進めてゆきます。

   本研究室の全体ゼミに関しては、「あれこれ指摘されて自分を見失ってしまうのではないか」というような心配は無用です。教員は常に各学生の状況を踏まえ、学生自身にとって有益な質問やコメントを行うよう努めていますし、また、研究指導を担当する教員と側面支援する教員の区分けを明確にしているため、多様なコメントを貰って迷い道に入り込んでしまうこともありません。学生にとって、「水曜ゼミ」での発表は、現在進行中の作業を自然体で精一杯表現し、そして、先生方や他の学生からの反応や新たなアイデアをもらうことのできる貴重な機会であり、修士・博士を問わず、学生の皆さんは大いに前向きにこの授業に取り組んでいます。付言すれば、この「水曜ゼミ」は通常、修士と博士は分けて行っていますが、修士学生は関心があれば博士の授業に参加し、現在進行中の先端的な研究の様子に触れることができます。

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入門ゼミ・講読ゼミ・研究ゼミ・自主ゼミ等

    2022年度に始まった教育体制のもう一つの特徴は「入門ゼミ」の導入です。コース教員の各々が分担しながら、重要な分野・トピックの入門的な授業を開講し、大学院生は、知りたいと思っていた分野・トピックについて組織的に学ぶことができます。 なお、東京大学総合文化研究科の大学院授業はほとんどがセメスター授業(13回)ですが、文化人類学コースでは、入門ゼミも含めてターム授業(半セメスター、7回)を全面的に導入して、効率的な学習ができるようにしています。修士課程の標準修業年限は2年間と長くありませんが、幅広いテーマの「入門ゼミ」を履修することが可能です。

    学生各自は、この「入門ゼミ」に加え、「講読ゼミ」で研究の基盤を固めたり、「研究ゼミ」(発展的・実験的ゼミ)で新しい研究動向に触れたりしながら、それと並行して進む「水曜ゼミ」での発表を通じて、自らの研究を育てていきます。また、正式の授業枠に制約されない、自由参加の自主ゼミなども開講されています。

     水曜ゼミの授業枠ではまた、時折、博士論文のための長期調査を終えた学生が視聴覚資料などを多く交えて行う「フィールド報告サロン」が開催されています。これは学生にとって文化人類学ならではの研究方法の真髄に早くから触れる機会となっています。

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指導教員制度

    2022年度からの教育体制では複数の教員による研究指導が本格的に行われており、修士・博士とも中心的に研究指導を行う教員に加え、1〜2名の補助の指導教員がついて指導教員チームをなす体制となっています。すべての学生が「水曜ゼミ」で発表を行っているため、情報共有は容易で、また学生は指導教員チーム外の先生からもアドヴァイスをもらうことが可能です。もちろん、これは特定の教員から集中的に指導を受けることを妨げるものではなく、学生の研究内容に即して柔軟な対応がなされています。

   より細かく述べれば、修士課程においては、主指導教員が学習一般についての相談に応じ、研究指導教員(1〜2名)が研究内容についてのアドヴァイスを与える役目を担当しています。 博士課程においては1名の指導教員に2名の副指導教員がつく形になります。変更は随時可能です。

    2022年4月から開始した集団指導体制ですが、修士課程・博士課程とも、学生にとって以前と比べて大いに研究に取り組みやすくなったとの感想を得ています。

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本研究室で何を学ぶことができるか

    修士課程の学生は、文化人類学とその隣接分野の多様な授業に自らの関心に沿って参加し、先端的な学術的知識を身につけると同時に、全体ゼミを中心にコース教員と対話する中で自らの研究関心を本格的な学術研究として発展させ、そして、その内容を学術論文の形で表現する能力を身につけていきます。

    博士課程の学生は、コース教員のアドヴァイスを受けつつ、文化人類学またはその隣接分野において先鋭的でオリジナリティのある研究を行い、研究者としての活動を開始しつながら博士論文を書き上げていきます。

コース教員のメッセージを集めたページもご覧ください。

    水曜ゼミの授業風景

「フィールド報告サロン」の一場面。皆が参加できるようハイブリッドで行い、そのためマイクなども使っているものの、フレンドリーな雰囲気で活発なディスカッションが行われています。通常の水曜ゼミも同様のスタイルです。

本研究室および東京大学の研究環境

内部ネットワーク(通称 "anthronet")

    文化人類学研究室では2012年から Google Workspace for Education を利用した内部ネットワーク(通称 "anthronet")を持っており、学生は入学時にアカウントを発行されます。この anthronet を利用することで、教員・学生を問わず、情報交換や情報共有を効率的な形で行うことができます。また、この anthronet を土台にして、2019年より内部ウェブサイトの AnthroPortal が立ち上げられ、様々な研究上の参考資料にアクセスできるようになっています。

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院生会の組織

    文化人類学コースの大学院生は「院生会」を組織しており、修士1年から博士論文提出前の博士上級生まで、院生同士の横のつながりの中で、それぞれの研究を発展してゆくことができるのも、本研究室の研究環境の一つのポイントです。

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東京大学の教育・研究環境

    最後に、本コースの大学院生は東京大学大学院総合文化研究科および東京大学全体の非常に豊かな研究資源にアクセスできるという点も触れておきます。

    まず授業に関しては、総合文化研究科(駒場キャンパス)では、人文科学・社会科学・自然科学の幅広い分野の授業が各分野の先端的な研究者によって開講されており、人文・社会科学系の授業は受講に関する制限はありません。2023年度からは英語による人類学関係の授業も開講されます。さらに、シラバス検索によって他研究科(本郷キャンパス、柏キャンパス)で開講されている授業を見つけ、授業に参加することもできます。文化人類学コースの授業にも、総合文化研究科内および他研究科からの学生がしばしば来ています。

    また、文化人類学コースのある駒場キャンパスは、駒場図書館という非常に頼りになる総合図書館を有しているほか、学内の図書館ネットワークによって、他学部の図書館・図書室に所蔵されている図書の多くを取り寄せることもできます。また電子ジャーナル等に関しても幅広いデータベースにアクセスでき、研究上の大きな助けになっています。

    とはいえ、研究という作業の本当の担い手は一人一人の研究者自身、学生自身です。文化人類学コースの教員スタッフは、本コースで学ぶ学生の皆さんがこの教育研究環境を生かしながら、充実した学びの中で、第一線の研究者ないし専門的知識を有する社会人へと成長してゆくことを期待しています。

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