後藤はる美
後藤 はる美 GOTO, Harumi [准教授]
【総合文化研究科・教養学部スタッフ】
イギリス近世史。歴史人類学。
17世紀イギリスを主な研究対象に、イギリス革命、長い宗教改革、礫岩国家論のほか、人類学研究/認知心理学などとも関係の深い感情史/感覚史にも取り組んでいる。
email:
info@anthro.c.u-tokyo.ac.jp
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これまでの研究と現在の関心
近世イギリスを主な研究対象に歴史研究に取り組んできました。「近世」とは、英語ではearly modernとよばれ、「初期近代」と訳されることもありますが、ヨーロッパ史ではだいたい16~18世紀を指します。現在は、17世紀を中心にイギリス革命、長い宗教改革、礫岩国家論(複合国家論)、初期公共圏論のほか、歴史のなかの感情と感覚にも関心を寄せています。
研究手法としては、17世紀に生きた実際の人びとに注目するミクロストリア的アプローチを重視し、法廷史料をもとに宗教改革期ヨークシャ(イングランド北部)における法廷係争などを扱ってきました。当時の宗教は、現在の私たちの考える政治、経済、法、文化と不可分で、これらと一体となって、信仰が文化規範や世界認識の基盤をなしています。当時の人びとは、頭痛からの解放を神との和解と理解し、信仰の「確かさ」によって証拠の信憑性を裏づけようとする世界に生きています。
歴史研究では残された史料からいかにこれらの「生」を再構築するかが問われますが、その手法は人類学的調査にも通じるものがあります。日記や審問記録のようなエゴドキュメントや感情を扱う歴史研究は、近年とりわけ人類学や認知心理学、生命科学との学際領域でめざましく展開しており、私も注目しています。
大学院授業について
現在は、16~18世紀ヨーロッパにおける身体・感情を扱い、生物学的身体と文化的に構築される身体のはざまに位置づけられるものとして、感情を歴史学的に考察する授業を担当しています(地域文化研究専攻科目・学部後期課程科目としても同時開講)。広く歴史学、近世/近代、ヨーロッパやキリスト教文化、身体と感情に関心のある人の参加を歓迎します。
大学院進学を考えている方へ
東大文化人類学研究室は、人類学・民俗学・科学技術論・比較政治学・歴史学の研究者が協働し、合同でゼミを運営する、国内でもめずらしい学際的な研究室です。
上述のとおり、私自身の専門は歴史学です。そもそも歴史学と人類学はどのように異なるのでしょうか?かつては歴史学は時間を移動し、人類学は空間を移動する学問とも言われ、私の研究する前近代社会と「未開の」地域社会はある意味で近しいテーマでもありました。しかし、ここ数十年間に人類学・歴史学がともに複数の学問的「転回」を経験し、研究対象が多様化するなかで、これらの性格づけは説得力を失ってきています。一方で、ふたつの学問領域はより緊密な形で新たな接点を見出しつつあります。なかでも感情や身体というテーマは、歴史学と人類学がそれぞれのやり方で「自然」と「文化」の関係を問い直すなかで、両者が再び出会う場となりつつあると感じています。
「歴史人類学」は?これはさまざまな立場を含みますが、人類学的テーマや手法に学びつつも、対象を時間軸のなかで考えるところに特徴があると言えるかもしれません。とくに私が専門とする近世は、現在につながるさまざまな価値観が現われはじめた時代です。しかし同時に、今の時代には失われてしまった独特の規範と秩序によって規定された世界でもあります。異文化としての過去を探求することが、21世紀の私たちを無意識のうちに規定している枠組みを相対化し、現代社会のさまざまな側面を批判的に考える力をつける一助となることを期待しています。
なお、イギリス史教員としては、総合文化研究科地域文化研究専攻(イギリス科)において歴史学分野の研究指導も行っています。歴史研究に主に興味のある方は、地域文化研究専攻HPも参照してみてください。
近年の業績
【書籍・論集】
後藤はる美「ブリテン諸島における革命」木畑洋一・安村直己責任編集『岩波講座世界歴史 第15巻 主権国家と革命』岩波書店、2023年
伊東剛史・後藤はる美編『痛みと感情のイギリス史』東京外国語大学出版会、2017年
後藤はる美「ヨーロッパの礫岩――17世紀イングランド・スコットランドの法の合同論」古谷大輔・近藤和彦編『礫岩のようなヨーロッパ』山川出版社、2016年、158~171頁
【論文】
後藤はる美「論争的史料と歴史学――「1641年反乱の証言録取集」をめぐって」『歴史学研究』1021号(2022年)11~21頁
後藤はる美「我らが北部の歓待の流儀」?――宗教改革期イギリスにおける感情と感情共同体――」『エモーション・スタディーズ』(2020年)5巻1号、56~63頁
後藤はる美「17世紀ブリテン諸島における礫岩国家・主権・法の支配」『歴史学研究』976号(2018年)、168~178頁
後藤はる美「17世紀イングランド北部における法廷と地域秩序――国教忌避者訴追をめぐって」『史学雑誌』第121編10号(2012年)、1~36頁
【文化人類学研究室・教員関係ページ】
教員紹介(全体)・・・コース教員一覧(各教員の研究内容概要、個別ページへのリンクを含む)
教員による著書・・・スタッフの著作の表紙画像(内容紹介ページへのリンク付き)
進学を考えている人へ(全体)・・・教員スタッフからのメッセージ(「進学情報」セクション内)
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オオツキ グラント ジュン OTSUKI, Grant Jun [准教授]
藏本 龍介 KURAMOTO, Ryosuke [准教授] (東洋文化研究所)
後藤 はる美 GOTO, Harumi [准教授]・・・本ページ
関谷 雄一 SEKIYA, Yuichi [教授]
塚原 伸治 TSUKAHARA, Shinji [准教授]
津田 浩司 TSUDA, Koji [教授]
中村 沙絵 NAKAMURA, Sae [准教授]
名和 克郎 NAWA, Katsuo [教授] (東洋文化研究所)
浜田 明範 HAMADA, Akinori [准教授]
箭内 匡 YANAI, Tadashi [教授]
渡邉 日日 WATANABE, Hibi [教授]
森山 工 MORIYAMA, Takumi [教授] ※兼任教員、総合文化研究科地域文化研究専攻