名和克郎
名和 克郎 NAWA, Katsuo [教授]
【東洋文化研究所スタッフ】
社会・文化人類学、とりわけ集団範疇・儀礼・言語使用に関する人類学的研究、ネパール・ヒマラヤ民族誌。
0. 私の所属について
私の東京大学における第一の所属は、東洋文化研究所という、本郷キャンパスにある研究所です。
大学院総合文化研究科では、文化人類学研究室の正規の教員の一人として、他の先生と同様、セミナーや学生の教育にあたっています。研究室の全教員が参加する大学院「水曜ゼミ」にも、毎週現れます。
2020年4月より一時的に、主たる所属が大学院情報学環・学際情報学府となっています(詳しく言うと、東洋文化研究所からの「流動教員」という形です)。これに伴い、学府の英語コースであるアジア情報社会コースでの授業及び教育も担当しております。
1. これまで取り組んできたこと/現在取り組んでいること
極西部ネパール高地に位置するビャンス及び周辺地域におけるフィールドワークの成果を主たる基盤として、社会範疇(主に「民族」、「カースト」といった語で論じられてきたもの)の構成、儀礼の持続・変容過程とそれに対する慣習的行為や語られる規範の関係、多言語使用、翻訳、言語イデオロギーといった言語使用に関する問題系、等について、民族誌的な研究を行ってきました。抽象度を上げれば、主たる関心は規範と行為の関係性を巡る問題にあります。時々、フィールドワークの成果に基づかない理論的な論文や、文化人類学の枠に収まらないネパール研究や南アジア研究などの論文を書くこともあります。基本的には、大きな理論構築を目指すよりは、現地で得た情報や先行研究との対話により、民族誌的な理解と理論的考察の双方を、同時に少しずつ先に進めようとするタイプの研究者だと思っています。
近年取り組んでいる具体的な課題として、例えば以下のものがあります。
20世紀中葉以降のネパール領ビャンス出身者の社会動態の再構成〜国境、教育資本、移動性
ネパール領ビャンスにおける儀礼の持続と変容〜ハビトゥス、言説、合理性…
2015年震災後のネパールにおける「棲まう」実践の変容
21世紀の南アジアにおける「ポピュリズム」の比較検討
2. 大学院授業で取り上げてきたテーマ
大学院と学部の合併で行われる講義形式の授業では、主に「集団範疇論(「民族」「カースト」「国民」等)」、「言語人類学」、「親族と社会」、「儀礼」といった主題について論じてきました。
セミナーでは、上記の主題の他、特定の人類学者の主要業績を半年かけてゆっくり読んだり、著名な人類学者が行った記念講演を毎回一つずつ読み、学説史をふまえて議論したり、といった試みをしたこともあります。
なお、現在Sセメスターでは、大学院学際情報学府と合併でハイフレックスで行っている英語の講義(大学院のみ、内容的には、「人類学的民族誌入門」或いは「人類学的アジア社会研究概論」)の担当となっているため、駒場キャンパスでの私自身の日本語での講義・セミナー(原則として学部・大学院合併)は、当面Aセメスターのみとなる見込みです。
3. 本研究室への進学を考えている人へ
文化人類学という学問には、様々な入口があります。私の場合、高校生の時、長期の「フィールドワーク」を通して人間について考える文化人類学という学問分野があることを知り、その方向性に惹かれたのが始まりでした。大学院進学にあたり、地域的にはネパール研究を志すこととなりました。この選択は幾つかの、どちらかと言うと消極的な理由からでしたが、幸い様々な出会いに恵まれ、これまで継続出来ています。
この研究室で出来ることも多様です。私自身は、特定の村の人々の間に長期間住み込むという、今や古典的とも言える形で博士課程での現地調査を行いました。しかし近年「フィールドワーク」のやり方は著しく多様化しており、また主題によっては「フィールドワーク」以外の手法を用いて研究を進めることも不可能ではありません。研究室内外の教員や院生、また先行研究との対話の中で、あなた自身のやり方を模索していくことになるでしょう。ただ、私を含め多くの人類学者は、「自分の持っていた前提や、先行研究との対話の中で構築した仮説が、何らかの「現実」によって思わぬ形で覆される」という経験を通して進み続けることを、今でも一つの理想として共有しているのではないかと思っています。
この研究室には多くの教員が所属しており、問題関心も研究や指導のスタイルも様々です。是非、ご関心に応じて、複数の教員のページをのぞいて見てください。私の場合、学生が書いてきた文書やメモを元に、その先を共に考えていくというやり方が実質的な「指導」の中核となります。受け入れにあたり地域的な限定はありませんが、テーマ的には私自身の研究関心に近い方が、よりよい議論が出来る可能性が高くなるとは思っています。
4. 主な仕事
さしあたりこちらをご覧下さい。
【文化人類学研究室・教員関係ページ】
教員紹介(全体)・・・コース教員一覧(各教員の研究内容概要、個別ページへのリンクを含む)
教員による著書・・・スタッフの著作の表紙画像(内容紹介ページへのリンク付き)
進学を考えている人へ(全体)・・・教員スタッフからのメッセージ(「進学情報」セクション内)
***
オオツキ グラント ジュン OTSUKI, Grant Jun [准教授]
藏本 龍介 KURAMOTO, Ryosuke [准教授] (東洋文化研究所)
後藤 はる美 GOTO, Harumi [准教授]
関谷 雄一 SEKIYA, Yuichi [教授]
塚原 伸治 TSUKAHARA, Shinji [准教授]
津田 浩司 TSUDA, Koji [教授]
中村 沙絵 NAKAMURA, Sae [准教授]
名和 克郎 NAWA, Katsuo [教授] (東洋文化研究所)・・・本ページ
浜田 明範 HAMADA, Akinori [准教授]
箭内 匡 YANAI, Tadashi [教授]
渡邉 日日 WATANABE, Hibi [教授]
森山 工 MORIYAMA, Takumi [教授] ※兼任教員、総合文化研究科地域文化研究専攻