箭内匡
箭内 匡 YANAI, Tadashi [教授]
イメージの人類学。自然と身体の人類学。人類学と哲学(スピノザ、ベルクソン、ドゥルーズ等)。映像的思考。スペイン、南アメリカ。
1. これまで取り組んできたこと/現在取り組んでいること
文化人類学の今日的な諸テーマを、映画・映像などのイメージ的表現の実践や、哲学における議論と交叉させながら、文化人類学の「原論」のようなものを構想してきました(これを「イメージの人類学」と呼んでいます)。その趣旨は、様々なフィールドに関する民族誌的記述や理論的考察、民族誌映画のような映像的ないしイメージ的表現、そして人々の日常的実践の三つの間を行き来したりしながら、人間の生をめぐる考察としての人類学を深化させることです。地域として関わりが深いのは、スペインと南アメリカのスペイン語圏です。
詳細は個人ウェブサイトをご覧ください。https://sites.google.com/a/anthro.c.u-tokyo.ac.jp/yanai/
2. 大学院授業(多くは学部合併)で取り上げてきたテーマ
これまでの授業では、「イメージの人類学」という概念装置を軸にして、garden/gardeningの人類学、火山とディナミスムの人類学、バイオミミクリーの人類学、自然経験の人類学、植物人類学、emotion/affectをめぐる人類学、生物学と人類学、感覚イメージの人類学、福島の原発被災、自然と身体、映像とメディア、フーコーの哲学、フィールドワーク論、南米先住民人類学、イメージの経済、芸術/人類学、F・ワイズマンの映画といった多様なテーマを取り上げてきました。詳細はこちら: https://sites.google.com/a/anthro.c.u-tokyo.ac.jp/yanai/courses/graduate
3. 本研究室への進学を考えている人へ
2022年度からの新教育体制への移行によって、学生側からみて、いわゆる「指導教員」とそれ以外の教員の垣根がとても低くなりました。複数の先生から同時に指導を受けることもできるほか、「水曜ゼミ」でのディスカッションの中で、狭義の指導教員以外の先生に思わぬ方向からアドヴァイスをもらったりして、学生にとってとても刺激のある研究環境になっています。私もスタッフの一員として様々な形で積極的に研究指導に参与しています。
私は、文化人類学の作業というのは、データを集めてそれに分析を加えることではなく、様々な「経験」を積み重ね、それらの経験と正面から向き合うこと、それらを裏切ることなく考え抜くことだと思っています。拙著『イメージの人類学』(2018)の中で使ったイメージ・社会身体・自然といったキーワードもこの考えと直結したものです。研究指導でも、院生の皆さんが民族誌やフィールドと素直に向き合う中で、物事自体の中に宿る新しい見方を引き出してゆく手助けをしたいと思っています。水曜ゼミで、個人のゼミで、また面談の中で、皆さんと話し合い、一緒に考えていくのを楽しみにしています。
4. 主な仕事
【主著】
『イメージの人類学』(2018) せりか書房 [紹介ページ]
【編著 2006-2020】
『アフェクトゥス——生の外側に触れる』(西井凉子との共編、2020)京都大学学術出版会 [UTokyo BiblioPlaza]
『映像人類学(シネ・アンスロポロジー)——人類学の新しい実践へ』(村尾静二、久保正敏との共編、2014) せりか書房 [断章1] [断章2] [断章3]
【主要論文 1988-2022】
「「多種民族誌から「地球の論理」へ」(2022) 『思想』1182号 [当該号目次]
「スピノザと「植物人類学」―アフェクトゥス概念の人類学的一展開」 および 「アフェクトゥスとは何か? [西井凉子との共著] 」 所収:西井・箭内編『アフェクトゥス——生の外側に触れる』(2020、上掲)
「神々が息づく映画——ルーシュとアフリカ的自然」(2019) 所収: 千葉文夫・金子遊編『ジャン・ルーシュ——映像人類学の越境者』 森話社
「灰色地帯を生き抜けること」(2019) 所収: 関谷雄一・高倉浩樹編『震災復興の公共人類学ー福島原発事故被災者と津波被災者との協働』東京大学出版会
「多自然主義を越えて——自然と身体の人類学のための一考察」(2017) 『現代思想』(総特集 人類学の時代) 45(4)
"Theories in images: Tadashi Yanai in conversation with Arnd Schneider," and "Flowers' life: Notes and reflections on an art-anthropology exhibition [co-author: Tomoko Niwa]" (2017), in Arnd Schneider ed., Alternative Art and Anthropology: Global Encounters, Bloomsbury.
「序論、人類学から映像-人類学(シネ・アンスロポロジー)へ」、「ジャン・ルーシュの思想——「他者になる」ことの映画-人類学」、「映画作家ルーシュ——ヌーヴェルヴァーグ映画を鏡として考える [小河原あやとの共著]」 所収: 村尾・箭内・久保編『映像人類学(シネ・アンスロポロジー)』(2014、上掲)
「第三種の政治に向かって-人類学的生権力論の一つの試み」(2013)『思想』1066号 [断章]
"Bosquejo de una teoría de antropología de las imágenes: para una nueva "imagen del pensamiento" antropológica" (2011) Quaderns-e No. 16(1-2): 16-30, Institut Català d'Antropologia, Barcelona.
「もう一人のレヴィ=ストロース-連続性の問題をめぐって」(2010) 『現代思想』36(1)
「イメージの人類学のための理論的素描-民族誌映像を通じての「科学」と「芸術」」(2008) 『文化人類学』第73巻2号 [断章] [論文ダウンロード]
「映像・光・スピノザ―「内在性の映画」の示すもの―」(2007)『思想』999号 [断章]
「アイデンティティの識別不能地帯で-現代マプーチェにおける「生成」の民族誌-」(2002) 所収: 田辺繁治・松田素二編『日常的実践のエスノグラフィ-語り・コミュニティ・アイデンティテイ』 世界思想社 [断章]
「マプーチェ社会における口頭性-思考と存在の様式としてのコミュニケーションの様式-」(2000)『国立民族学博物館研究報告』25巻2号 [断章] [論文ダウンロード]
「想起と反復-現代マプーチェ社会における文化的生成-」(1995)、博士論文、東京大学大学院総合文化研究科、未刊行。[断章]
"Rememoración y repetición: análisis de un relato mapuche sobre la creencia" (1994) Scripta Ethnologica. Vol.XVI. Buenos Aires. pp.67-83.
「人類学と民族科学-スペイン・ガリシア地方の民間医療に関する一つの反省」(1988)『民族学研究』53巻2号 [断章] [論文ダウンロード]
【映像 2009, 2020】
「自然と身体の人類学」(2020)(放送大学番組 「人新世」時代の文化人類学 第12回) ※単独視聴可、2026年度まで放映予定(視聴方法は下を参照)。
「イメージと創造性の民族誌」(2020)(放送大学番組 「人新世」時代の文化人類学 第13回)※同上。
「バルセロナ——3つの素描」(2009, 6分) [Vimeo] ※ 2000年代後半の諸論考と内的に結びついた実験的映像。
(参考) 箭内匡×田中晋平「イメージを生きることー映像と人類学の対話ー」(国立国際美術館 NMAOトークマラソン2022) [YouTube]
※放送大学番組の視聴方法: ものすごく面倒ではあるのですが、①放送大学の年間番組表に行く、②現在放映中の学期のPDFを開く、③「人新世」でキーワード検索して<「人新世」時代の文化人類学>の放映曜日・時刻をメモする、④同じPDFのp.3の「授業期間 授業回数カレンダー」で放映曜日の第12回・第13回を見る、という手順で、これら2つの番組の放映日を確認することができます(多大な時間をかけ、映像の流れを自分でイメージして作ったものなので、視聴していただけると嬉しいです)。
【文化人類学研究室・教員関係ページ】
教員紹介(全体)・・・コース教員一覧(各教員の研究内容概要、個別ページへのリンクを含む)
教員による著書・・・スタッフの著作の表紙画像(内容紹介ページへのリンク付き)
進学を考えている人へ(全体)・・・教員スタッフからのメッセージ(「進学情報」セクション内)
***
オオツキ グラント ジュン OTSUKI, Grant Jun [准教授]
藏本 龍介 KURAMOTO, Ryosuke [准教授] (東洋文化研究所)
後藤 はる美 GOTO, Harumi [准教授]
関谷 雄一 SEKIYA, Yuichi [教授]
塚原 伸治 TSUKAHARA, Shinji [准教授]
津田 浩司 TSUDA, Koji [教授]
中村 沙絵 NAKAMURA, Sae [准教授]
名和 克郎 NAWA, Katsuo [教授] (東洋文化研究所)
浜田 明範 HAMADA, Akinori [准教授]
箭内 匡 YANAI, Tadashi [教授]・・・本ページ
渡邉 日日 WATANABE, Hibi [教授]
森山 工 MORIYAMA, Takumi [教授] ※兼任教員、総合文化研究科地域文化研究専攻