文化人類学コース

(学部後期)- 概要


文化人類学」の視点から世界を見る

「文化人類学」は、地球上のさまざまな社会的状況における日常的実践を、「フィールド」の現場との分厚い関係にもとづいて研究する学問です。

 フィールドワークに基づく文化人類学独特の研究方法は、近代文明の対極にあるような部族社会や伝統的社会の人々とともに暮らす中で深められたものですが、近年はそうした研究方法が極めて広い応用性・有効性を持つことが理解されてきています。現代の文化人類学は、その研究対象を現代社会の様々な組織・施設に野心的に拡大し、また動植物を含む自然と人間の関係や、人工物ないし科学技術と人間との関係にも視野を広げて、重要な成果をあげつつあります。

多種多様な人間の活動・営みについての、細部と全体の両方を把握しようとする複眼的な観察力や、協力者との関係を築く社会的スキル、さらに、それを「人間」の問題として、大きな視野の中で考察する強靭でダイナミックな思考が、この文化人類学という学問の特徴です。


文化人類学コースの授業

    現在、文化人類学研究室のスタッフが専門とする研究領域は、民族、宗教、祭礼、政治、経済、知識、言語、イメージ、身体、医療、ケア、開発など多様な領域をカバーし、研究地域も、日本、東南アジア、南アジア、ロシア、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカと広い範囲に及んでいます(教員紹介ページはこちら)。

   教養学部専属の教員に加え、東京大学東洋文化研究所所属の教員も教鞭をとっているほか、非常勤講師や客員教員のご協力を得ることにより、さらに広がりのある授業展開を行っています。

   なお、文化人類学コースの授業の多く(必修科目を除く)は大学院の授業との合併の形で行われています。後期課程文化人類学コースの皆さんは基礎学力がしっかりしているため、積極的な授業参加は十分に可能で、これまで先輩たちもゼミ授業に大いに貢献してくれてきています。一方で、授業の内外でフィールドワークを進めている大学院生の研究などに身近に接することで、文化人類学の「現在」を感じながら学習を進めることができます。 


文化人類学コースのカリキュラム

    文化人類学コースの学生は、教養学科全体のカリキュラムの中で、コース独自の、(1) 必修4科目(文化人類学基礎論・文化人類学基礎演習・フィールド演習・卒論ゼミ)、(2) 重要分野への入門ゼミ、(3) 多様なトピックに関する研究ゼミ・講読ゼミ、の3種類の授業を履修しながら勉強を進めていきます。

    (1)の必修科目系ではまず、2年次Aセメスターに「文化人類学基礎論」を履修し、文化人類学の基礎をなす「民族誌」について学びます(これは3年次のフィールド演習の準備にもなります)。3年次Sセメスターでは、「文化人類学基礎演習」で文化人類学理論を学びながら、「フィールド演習」の授業で自らフィールドワーク(より正確には「民族誌的フィールドワーク」)を行い、そしてそれを受けつつ3年次Aセメスターで研究論文をまとめます。こうしたトレーニングを経て、4年次に「卒論ゼミ」で各自が卒業論文の作業に取り組みます(注1)。

    こうして文化人類学の基本的な理論と研究方法を学ぶ一方で、学生の皆さんは自分の興味関心に従って、入門ゼミ(注2)を履修してより専門的な知識の基礎を固めたり、また研究ゼミ・講読ゼミを通じて(注3)、より発展的な内容や研究技法を身につけていきます。そうした中で、ミクロとマクロの間、あるいは理論と現実の間を自由に行き来する、文化人類学独特の現場感覚・バランス感覚を備えた思考を身につけていくことになります


学生生活と卒業後の進路

   文化人類学コースの学生は、この学問を学ぶ中で、人間と人間を取り巻く世界に地に足がついた形で触れ、そして考えていくことを学びます。駒場キャンパス14号館4階(文化人類学事務室、セミナー室、機器室、学生室があるところ)を中心として営まれる、後期課程文化人類学コースの学生同士の交流、大学院生との交流、そしてもちろん教員との交流も、その一助です。コロナ禍以前には、毎年5月頃、学部生と大学院の新入生が自分の作った料理を持ち寄って皆で食べる「お料理コンパ」という行事が行われて親睦を深める機会となっていましたが、これも可能になり次第、再び行われるようになるはずです。

  卒業後の進路としては、大学院に進学して研究者を目指すほか、官公庁、民間研究所、シンクタンク、ジャーナリズム、メディア、その他民間企業などさまざまな分野で活動しています。 文化人類学コースで、机の上で頭で考えるのみならず、実地で人々と接しながら、経験のただ中から考える仕方を学んだ皆さんには、社会においても学んだ知見を大いに生かしてもらえるはずです。