大学院授業[2014]

東京大学大学院・総合文化研究科・超域文化科学専攻

文化人類学コース 開講授業 [2014年度]

木村秀雄 オイディプスとアンティゴネー(1)

哲学、心理学、歴史学、人類学などさまざまな学問分野から論じられてきた、ギリシャ神話のオイディプスとアンティゴネーの物語について検討する。


木村秀雄 オイディプスとアンティゴネー(2)

夏学期に引き続き、哲学、心理学、歴史学、人類学などさまざまな学問分野から論じられてきた、ギリシャ神話のオイディプスとアンティゴネーの物語について検討する。 [一覧に戻る]


川中子義勝 聖書の思想  ――比喩・譬えの問題

聖書の言葉やその詩的発話について考察を続けている。本年は「譬え・比喩」の問題を扱う。宗教において「譬え」は、「事柄」を「イメージ」を用いて述べる手段として、低い位置づけしか与えられることがある。「譬え」を、そのような非本来的「衣裳」とみなすのではなく、独自の存在秩序と働きを持つものとして確認し、その様態を聖書のテクストのなかに具体的に跡づけていく。思想と文学表現の密接なつながりに着目しつつ、聖書が「言葉」や「歴史」「文化」についてどのような把握を提示するかを考察する。


川中子義勝 ルターからバッハへ ―― 「コラール」の変遷をたどる 

宗教改革以降のプロテスタント信仰の歴史的変遷を、その讃美歌「コラール」の系譜をたどりつつ跡づける。ルターにおけるコラールの成立から、30年戦争期を経てバッハに至る時代を主にあつかう。フィリップ・ニコライやヨハン・ヘルマン、パウル・ゲルハルトなどの宗教詩が、作曲家によって曲を付されることによって、宗教民謡として民衆のうちに深く根をはり、その宗教生活と敬虔の実践を定めるに至る過程を、作品を具体的に紹介しつつ見ていく。作品としての近づきやすさの点から、カンタータなどJ・S・バッハの声楽作品に収められたコラールをも多く扱うことになろう。 


岩本通弥 現代民俗学としての〈語り〉と日常研究

ドイツの民俗学者アルブレヒド・レーマンの主唱する〈日常の語り〉の方法を、いかに理解するか、レーマンの諸論文を基礎として、アライダ・アスマン『記憶のなかの歴史―個人的経験から公的演出へ』(松籟社、磯崎康太郎訳、2011)をテキストに、民俗学の方法としての語り論、物語・記憶・歴史の関係性を考える。ドイツの日常史論や記憶論をはじめ、各種のナラティヴ論で補いつつ進めるが、とりあえず、アルブレヒド・レーマン『森のフォークロア―ドイツ人の自然観と森林文化』(法政大学出版局、識名章喜・大淵知直訳、2005年)を前提にしておく。

福島真人 [本年度開講科目なし(サバティカル)]


木村忠正 社会関係資本論の基礎

「社会関係資本(social capital)」という概念は、1990年代から社会科学において強い関心が寄せられ、広汎に議論されてきた。本授業では、とくに、情報ネットワークと社会関係資本との関係と、社会関係資本へのエスノグラフィー的アプローチについて留意しながら、社会関係資本に関する基本的文献を読み、基礎的理解を醸成することを目的とする。


木村忠正 ビジネスエスノグラフィー

「エスノグラフィー」は文化人類学において生み出され発展し、文化人類学を規定する方法論である。しかし90年代以降、心理学、教育科学、健康保健科学、経営学、防災科学など様々な分野から、エスノグラフィーへの関心が寄せられ、高まってきた。ビジネスの文脈においても、企業組織・業務改善の観点、マーケティングの観点双方から、多くの関心が寄せられ、1990年代から2000年代にかけて、「産業エスノグラフィー (ethnography within industry)」、「ビジネスエスノグラフィー (business ethnography)」、「企業人類学者 (corporate anthropologist)」といった用語が人口に膾炙するようになった。そこで本授業では、ビジネスエスノグラフィーについて、その成立の文脈、具体的な展開について考えていく。但し、ここで予め留意してもらいたいのは、本授業での「ビジネスエスノグラフィー」とは、エスノグラフィーのビジネスへの応用、ビジネスに資するエスノグラフィーという観点のみならず、ビジネス自体を反省的、批判的に捉えるエスノグラフィー、組織エスノグラフィーも射程に含むことである。とくに、シリコンバレーのIT企業群を対象として、労働と家庭のあり方をみることで、グローバル化とビジネスに対するエスノグラフィーも考えたい。 


箭内匡 自然と身体の人類学

自然とは何か? 身体とは何か? 今日我々が生きる世界で、それらが何であるかは誰にとっても自明ではない。文化人類学は、「未開」か現代かを問わず、きわめて多様な状況における民族誌的フィールドワークによって、自然や身体についてドグマティックでない形で考えるための貴重な資料を提供してきた。この授業では、網羅的というよりはむしろ、つまみ食い的に、民族誌的・人類学的研究を講読・コメントし、授業参加者自身が、現在進行形で、また必ずしも社会構築主義的にではなく、こうした問題を考えてゆくための手がかりを提供したい。


箭内匡 博士論文ライティングアップセミナー(夏) 

文化人類学コースにおいて博士論文を書き上げるためのセミナー。フィールドワークを終え、博士論文を準備中、或いは執筆しつつある文化人類学コースの博士課程の大学院生のみを対象とする。発表者が博士論文のドラフトの一部を発表し、セミナー出席者からのコメントを受けることで、論文完成へとつなげることを目的とする。 


渡邊日日 文化人類学演習II 

何かを探究するという営みおよびその発動に関して、理論的指針となるアメリカ・プラグマティズムの哲学的伝統に依拠しつつ、フィールドワーク・情報管理・問題発見といった現場の事例をもとに検討する


津田浩司 フィールドワーク論 

「ライティング・カルチャー」ショック以降、人類学においては民族誌を書くこと、およびその前提としての(かつそれと不可分な営みとしての)フィールドワークをすることに、より反省的であることが求められるようになった。とはいえ、民族誌を書くこともフィールドワークをすることも、人類学の主要な方法論であることには変わらない。本授業では、上記ショック以降の実験的民族誌を紹介するというよりも、フィールドワークについて論じたいくつかの文献を読むことを通して、改めて人類学的フィールドワークとは何かを初歩から考えたい。なお、フィールドワークの実践的なテクニックを教授する授業ではないので、注意されたい。


津田浩司 東・東南アジアの人類学―宗教の視点から

現代東南アジアおよび東アジアの宗教現象に関する民族誌を読み、種々の分析の視角を養うとともに、個別具体的な事例から人類学的にいかなる知見を導き出せるかを考える。なお、対象地域は必ずしも狭義の東南アジアや東アジアに限定するものではなく、また宗教現象全般に関心のある学生等の履修も妨げない。


名和克郎 儀礼の民族誌・再考

儀礼は、文化人類学、社会人類学の研究史において、ほぼ常に主要な関心領域の一つであった。だが、個々の人類学者が儀礼という語を用いる際に念頭に置いた事象や、この語を通して現象を分析することにより見いだそうとしたことには、かなりのぶれが存在する。ここでは、主に英語及び日本語で書かれた、儀礼に関する文化人類学、社会人類学の重要な民族誌を検討することを通じて、これまで人類学者は「儀礼」なる語によって何を議論し、何を議論し損ねてきたのか、現在「儀礼」なる語で何を論じうるのかについて、議論していきたい。


名和克郎 博士論文ライティングアップ・セミナー(冬)

文化人類学コースにおいて博士論文を書き上げるためのセミナー。フィールドワークを終え、博士論文を準備中、或いは執筆しつつある文化人類学コースの博士課程の大学院生のみを対象とする。発表者が博士論文のドラフトの一部を発表し、セミナー出席者からのコメントを受けることで、論文完成へとつなげることを目的とする。 [一覧に戻る]


関谷雄一 開発と文化人類学(演習) 

文化人類学は植民地主義と伝統文化の消失を導きかねない社会開発の現象に対し早くから警告を発し、批判をしてきた。一方、20世紀の中盤を超えたあたりで、徐々により良い社会開発の在り方を探るためにこの学問の知見が応用・活用されるようにもなった。その取り組みは開発実践に相対的なものの見方と、住民参加型の姿勢とノウハウをもたらした。20世紀終盤には、開発を脱構築して現象そのものを批判的に見つめる視点が登場する。今世紀初めには、開発現象を、より現場目線から見つめ直して取り組むための考察と実践を導く本授業では主として社会開発と文化人類学とのこれまでの関わり合いを踏まえつつ、開発現象に対してこの学問がどのように取り組んできたかを考察し、この知的潮流の今後の可能性について吟味する。


関谷雄一  現代アフリカ農村の実情と支援の在り方をめぐる考察(演習形式)

本授業ではアフリカの農村開発について、「内発的発展」「小規模農業」といった観点から取り上げているモノグラフを購読しながら、グローバル化時代にあって懸命に適応しようとしているアフリカ農民の姿を追う。一方でそうした農民の経済状況や生活事情を少しでも良くしようとする開発実践の現状についてもその功罪を含めて検証してゆく。 


森山工 フィクションと民族誌叙述・歴史叙述のあいだ

文学思想研究におけるフィクション論の展開を視野に入れ、それと人文社会科学、とりわけ文化人類学=民族誌学的な研究領域、および歴史学的な研究領域、とりわけそこにおける物語の構築とのかかわりについて考察する。


森山工 贈与と交換を通じた社会の自立と共同

贈与と交換をめぐる文化人類学的な考察には長い蓄積があります。本講では、それらのうちの代表的なものを検討しながら、贈与と交換のなかで社会がみずから自立し、他と共同する様態を把握することを試み、贈与と交換が社会形式と社会関係に対して持つ意義について考察をほどこします。  

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